英語で味わう古今和歌集 仮名序-4 紀貫之 Enjoying Kokin Waka Shu in English: Preface-4 Ki no Tsurayuki

英語で味わう古今和歌集 仮名序-4 紀貫之
Enjoying Kokin Waka Shu in English: Preface-4 Ki no Tsurayuki

安積山(アサカヤマ)の言葉は、采女(ウネメ)の戯(タハブ)れよりよみて、この二歌(フタウタ)は、歌の父母(チチハハ)のようにてぞ手習ふ人の初めにもしける。

そもそも、歌のさま、六つなり。唐の詩にもかくぞあるべき。その六種(ムクサ)の一つには、そへ歌。大鷦鷯(オホササギ)の帝をそへ奉れる歌。

  難波津に咲くや木(コ)の花冬こもり今は春べと咲くや木の花

といへるなるべし。

二つには、かぞへ歌。

  咲く花に 思ひつく身の あぢきなさ 身にいたつきの いるも知らずて

といへるべし。

三つには、なずらへ歌。

  君に今朝(ケサ) 朝(アシタ)の霜の おきていなば 恋しきごとに 消えやわたらむ

といえるなるべし。

The poems of Azuchi Yama were composed by a maid-in-waiting, amusing herself. The two poems are told to this day the father and mother of poetry to be learnt by beginners, at first. 

In the first place, there are six styles in Japanese poetry as in Chinese.

First is Soe Uta, poetry to supplement something like that offered to Emperor Osasagi.

  Plum blossoms are in full bloom at Naniwa Zu, now that it is spring, as if coming out of hibernation.

Second is Kazoe Uta, straightforward poetry as if counting numbers.
  
  How ephemeral I am, fascinated by blossoming flowers, as if unaware of an arrow shot, pierced into my body.

Third is Nazurae Uta, poetry comparing one to something else.

  Frost is falling next morning I met you. Now that you have gone, I am depressed every time I miss you as if frost is disappearing during the day. 

(現代語訳)
安積山の歌は、采女(天皇の食膳を奉仕した下級の女官)が戯れながら(遊び興じて)詠んだ歌です。この二首は、歌の父母と言い伝えられ、手習いをする人が最初に習った歌です。

そもそも、歌の様式には六種類あります。中国の詩も同様でしょう。

その第一は、「そえ(他の事柄にこと寄せて思いを詠む)歌」で、大鷦鷯(オホササギ; 仁徳天皇の旧名)の帝にそえて献上した歌

  難波津に梅の花が咲いている。冬はこもっていたが、今こそ春だとばかり咲く梅の花なのだ。
 
というような歌。

第二には、「かぞえ(感じたことを他のものになぞらえず、そのままに詠む)歌」。

  咲く花に心を奪われた身はなんとはかないのだろう。射った矢が身体に入っているのも知らないのだから

というような歌。

第三は、「なずらえ(他の物事にたとえ比べて思いを述べる)歌」。

  あなたに逢った翌朝に霜が降り、(あなたが)起きていなくなってしまえば、恋しく思うごとに、霜が消えるごとくに消沈の心なのです。

というような歌。

By Kota Nakako

2024/11/02

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