川越5-4(新富町1-11-8)です。本川越駅から徒歩3~4分(260m)。地価公示は㎡当たり373,000円坪約123万円、前年比+1.9%。地積は105㎡、西5.8m市道に接道、指定建ぺい率80%、基準建ぺい率は90%、指定容積率400%ですが、基準容積率は、接面道路幅が5.8mなので幅員に60をかけた348%、最有効使用は先程の川越5-2と同じく中層店舗兼事務所です。
市場の特性としては、「同一需給圏は川越市及び周辺市町において店舗・事務所ビルが建ち並ぶ普通商業地域である。主たる需要者は自用又は、収益事業用の土地を需要する個人、企業等のエンドユーザー、デベロッパー等が考えられる概ね熟成した商業地域であり、供給が少ないことから、取引はあまり見られず価格水準の把握は難しい。近隣地域は最寄駅と川越の中心観光地である蔵造の町並みとの間にあり、商業施設等も多く見られるため、需要そのものは底堅いと思料する」(A)、また「同一需給圏は、埼玉県内の東武東上線、西武新宿線、JR川越線の各線で、駅への接近性に優れる商業地域。需要者は地元企業に限定されず全国展開する企業に広がりを見せています。飲食とサービス業の需要が確実で不動産市場で物件化される前に売買が完了しています」(B)との指摘があります。川越の中心観光地である蔵造の町並みへの近さが魅力になっていることがわかります。
鑑定評価額の決定にあたっては、「商業地における取引事例数は少ないものの、採用した取引事例はいずれも同一需給圏内に存し、実証的で規範性の高い事例である。補修正も適切であり比準価格の説得力は高い。一方、収益価格については賃料設定等適切と判断されるが、建築費の高止まりしている状況等もあり、収益価格はやや低位に試算された。したがって、比準価格を標準に、収益価格を比較考量の上、周辺標準地との均衡にも留意して、鑑定評価額を上記の通り決定した」、また、評価書Bには「地方都市の商業地と同様にテナント需要は1階に集中しています。このため建物全体の収益性を指標として価格形成がなされるまでに至っていないことから、比準価格を標準とし収益価格を勘案して本川越駅に近接する商業地の市場動向も十分考慮のうえ、上記のとおり鑑定評価額を決定」との記述があります。「テナント需要は1階に集中」しているの指摘も重要なポイントです。
なお、試算価格については、比準価格は380,000円/㎡(坪約126万円)、収益価格は304,000~319,000円/㎡(坪100~105万円)で、収益価格は比準価格の80%程度(80.0~83.9%)となっています。
価格形成要因の変動状況について、一般的要因については、景気回復傾向が鈍化する中、消費増税や令和
元年台風19号などの自然災害が日本経済に与える影響は今後の懸念材料と考えられる」、「地価変動に影響している経済環境の著しい変化、近年の想定を超える自然災害のリスク、インバウンド需要の増加を注視しています」とあります。地域要因については、「・・特段の変動要因はないが、川越市内の観光入込客数は増加傾向で、商業地の需要は堅調であり、地価動向は上昇傾向にあるものと思料する」(評価書A)、「観光客の流入増加と本川越駅西口開設効果から商況の漸増が継続しています」(同B)の指摘があります。やはりインバウンド需要がプラス要因になっていることがわかります。また、本川越駅西口の再開発の効果も注目されるところです。
中湖康太 Kota Nakako
June 2020