2023 地価レビュー 板橋-3 住宅 常盤台

2023 地価レビュー
板橋-3 住宅 常盤台

(KNコメント)

常盤台住宅地

いわゆる常盤台住宅地にある。戦前東武鉄道(初代根津嘉一郎社長)が「健康住宅地」の名のもとに、内務省の設計により欧米田園都市をモデルに区画整理事業として開発分譲した住宅地。地域内を回遊するプロムナード(並木道:幅員8m)、環状のクルドサック、ロードベイ(プロムナード沿い公園)が特徴。ときわ台駅北口ロータリーは16m道路に囲まれ、東京私鉄沿線では最上級の規模。標準地は、プロムナードから1本南側の道路沿いにある。

需要者の広がり

鑑定評価書にあるように、「東武東上線沿線の中でも高級住宅地域であり、需要の中心としては板橋区及び周辺区内の高所得者層と考えられ、また、区域外からの転入需要も見られる」と、近年需要者は広がりを見せている感がある。

中心価格帯: 坪単価250万円程度 (実勢)

このクラスの土地は供給が限られていることから、土地価格は高止まり、上昇傾向にある。「市場の中心となる価格帯は、200㎡程度の画地の更地売りで1億円台前半~後半」から、200㎡1億5000万円とすると、坪単価248万円程度となる。

土地の稀少性: 長期国債とのスプレッド +1.5% 公示価格ベース (土地)

稀少性が高く、快適性、利便性が重視されるため、収益価格は、比準価格、公示価格の49.3%。収益価格算定の支払賃料は、126㎡の1LDKで月35~36万円となっている。土地の還元利回りは4.1%で算定されている。ちなみに公示価格ベースの利回りは2.0%*で、長期10年国債(0.5%)とのスプレッドは1.5%。このクラスの土地の稀少性を鑑みると国債比1.5%のスプレッドから算定される価格は高いとは言えないかもしれない。

* 鑑定評価書では、純収益を建物等、土地に帰属する純収益に分けて算出している。これはやや技巧的である。下記は、複合不動産の利回りから算定している(KN注)

複合不動産としての利回り: 3.58% 長期国債とのスプレッド2.58% (公示価格ベース)

複合不動産としての利回りは、収益価格ベースで5.06%、公示価格ベースで3.08%。長期10年国債とのスプレッドは、公示価格ベースで2.58%。同様にの稀少性からすると高いとは言えないかもしれない。

(以下、鑑定評価書より)

令和5年公示価格: 629,000 円/㎡  前年比+3.3% (前年公示地価609,000 円/㎡)

所在及び地番並びに「住居表示」等: 
板橋区常盤台2丁目24番10  「常盤台2-24-5」
地積:287㎡
法令上の規制等: 1低専 (50,100) 準防 (その他)高度地区1種 景観形成重点地区 (60,100)
形状: 1:2
敷地の利用の状況: 住宅 RC2F1B
周辺の土地の利用の状況: 中規模一般住宅が建ち並ぶ環境の良い住宅地域
接面道路の状況: 南6m区道      
供給処理施設状況: 水道、ガス、下水
主要な交通施設との接近の状況: 東武東上線ときわ台駅 440m
範囲: 東20 m、西40 m、南50 m、北0 m
標準的使用          中層店舗兼事務所地
標準的画地の形状等: 東50m、西50m、南50m、北50 m
標準的使用: 低層住宅地

地域要因の将来予測: 当該地域は主として敷地規模が大きい戸建住宅が区画整然と立ち並ぶ優良な住宅地域で、地域要因に特段の変動はなく、当面現状のまま推移するものと予測する。

最有効使用の判定             低層住宅地
取引事例比較法   比準価格           629,000 円/㎡
収益還元法          収益価格           310,000 円/㎡

市場の特性:
同一需給圏の範囲は、板橋区及びその周辺地域の東武東上線や東京メトロ有楽町線等の駅から徒歩圏内の居住環境が比較的良好な住宅地域である。主たる需要者は区内及びその周辺地域の比較的所得水準が高い層である。需給においては、コロナ禍の影響はほぼ無くなった。本地域では良好な居住環境を有するも、1区画の土地価格が1億円台になるなど高額になることから購買層が限られ需要が急騰することは無いが、供給量が少ないため価格は高止まりしている。(鑑定評価書A)

同一需給圏を、板橋区及び隣接区内の東武東上線沿線の各駅から徒歩圏の住宅地域と判定した。近隣地域は東武東上線沿線の中でも高級住宅地域であり、需要の中心としては板橋区及び周辺区内の高所得者層と考えられ、また、区域外からの転入需要も見られる。また、こうした高級住宅地では注文住宅が中心となり、建売住宅は相対的に少ない。市場の中心となる価格帯は、200㎡程度の画地の更地売りで1億円台前半~後半である。(鑑定評価書B)

試算価格の調整・検証及び鑑定評価額の決定の理由:
対象不動産の主たる需要者は自己利用を目的とした居住の快適性や生活利便性に着目した会社員などであり、付近に共同住宅があるものの賃貸収益を重視する度合いは極端に低いと考えられる。ゆえに、実際に市場において取引された価格に着目した比準価格が賃料収益から導かれた収益価格より相対的に説得力が高いと判断した。したがって、本件においては比準価格を標準として収益価格を参考程度とし、上記の鑑定評価額を決定した。(A)

対象標準地の近隣地域は区画整然とした高級住宅地に存し、戸建住宅が中心となるため、収益価格の相対的信頼性は劣る。また、収益価格は地価に見合う賃料の設定が難しく、低位に試算された。一方で、比準価格は取引市場における市場性を反映しており、実証的な価格が得られた。よって、収益価格を参考に留め、比準価格を採用し、鑑定評価額を上記の通り決定した。(B)

価格形成要因の変動状況:
[一般的要因]  区内の人口はほぼ横這い、世帯数はやや増加傾向にある。取引件数はほぼ横這いであるが、取引価格は上昇傾向にある。賃料は横這い傾向にある。
[地域要因]  駅から近く区画整然とした住宅地域で、東武東上線沿線では最優良住宅地であり、地域要因に特段の変動はない。
[個別的要因] 個別的要因につき変動はない。

(参考)
想定建物の状況
用  途: 共同住宅
建築面積(㎡): 共同住宅              126.00
構造・階層: LS2
延床面積(㎡): 252.00
想定建物の概要: 各階1DK~1LDK等の住戸からなる共同住宅を想定
有効率の理由:   外階段を想定

建物等の初期投資額: 54,500,000 円
算 出 根 拠: 210,000 円/㎡ × 252.00 ㎡ × (100% + 設計監理料率 3.00 %)
想定賃料: 
                            有効面積(㎡)       月額支払賃料(円/㎡)       月額支払賃料(円)
1F                      126.00                 2,818                                               355.000
2F                 126.00                 2876                                                362,000
計                         252.00                                                                        717,000

①総収益8,616,045 円      
②総費用1,361,220 円      
③純収益 ①-②= 7,254,825 円      
④建物等に帰属する純収益 3,520,700 円      
⑤土地に帰属する純収益 ③-④3,734,125 円      
⑥未収入期間を考慮した土地に帰属する純収益 = ⑤×α3,641,892 円  (12,690 円/㎡)
土地の還元利回り: 4.1%

KN注:複合不動産の利回りによる考察:簡便法

a. 収益価格: 88,970,000円 = 310,000 円/㎡ x 287㎡
b. 建物等の初期投資額: 54,500,000 円
c. 複合不動産の総額 (収益価格ベース): 143,479,000円 (=a + b)
d. 複合不動産の純収益: 7,254,825 円
e. 複合不動産の利回り: 5.06% = d / c 

f. 公示価格: 総額181,000,000 = 629,000 円/㎡ x 287㎡
g. 複合不動産の総額 (公示価格ベース):  235,500,000 円
h. 複合不動産の利回り: 3.08% = d / g

鑑定評価書 (mlit.go.jp)

以上

By Kota Nakako

2023/4/20

 

 

 

 

 

にほんブログ村 本ブログ 詩集・歌集・句集へ   にほんブログ村 本ブログ 古典文学へ   にほんブログ村 本ブログへ