2024 地価公示レビュー 甲府5-5 商業

2024 地価公示レビュー
甲府5-5 商業

東京から程近く、富士山に代表される豊富な自然・観光資源に恵まれた山梨県。ファナックに代表されるように工作機械、電気機械、電子部品産業なども有する。リニア新幹線(東京―名古屋間)が2027年以降に開通する計画で、甲府市内に新駅が開業する予定。今後その魅力が大いに高まる可能性を秘めている。

東京からほど近い

山梨県は、日本列島のほぼ中央に位置し、東京から直線距離にして約110㎞(東京駅-甲府駅)。東京都、神奈川県、静岡県、長野県、埼玉県に囲まれた海のない内陸県。総面積4,465.27㎡(全国第32位)、総人口約81.0万人(全国42位; 2020年国勢調査)。富士山、八ヶ岳、南アルプスなどの自然豊かな観光資源に恵まれ、県土の約78%を森林が占める。

豊富な自然と観光資源 そして製造業

山梨県の県内総生産は、3,552,685百万円で全国41位(全国シェア0.64%; 令和2年度 内閣府)。産業構造を見ると、製造業を中心として第二次産業の構成比が高く、豊富な水資源を生かして、製造品出荷額については電気機械、生産用機械、電子部品などの割合が高くなっている。工作機械用NC(数値制御)装置で世界首位のファナックがある。また食品ではワインやミネラルウォーターの生産量が全国トップクラス。富士山、八ヶ岳、南アルプスなど雄大な山々にかこまれた山梨県。県内には、湖や温泉、リゾート施設をはじめ魅力的な観光資源がある。

リニア中央新幹線が開通予定

時速500kmのリニア中央新幹線は、山梨と東京を約25分、東京と大阪を1時間ほどで結ぶ世界最速の新幹線。2027年以降に東京都~名古屋市間で営業運転を開始する計画*で、甲府市大津町に新駅が開設される予定。現在、山梨県にあるリニア実験線において営業運転に向けた走行試験が実施されており、県内には超伝導リニアの仕組みや原理を体験しながら学ぶことができる博物館「山梨県立リニア見学センター」がある。リニア中央新幹線の開通によって、山梨県全体が活性化することに大きな期待が寄せられている。

* 当初2027年開業予定だったが、静岡工区の着工の遅れにより、2027年以降になる見込み
JR東海 リニア中央新幹線の2027年開業断念へ 静岡県着工認めず | NHK | 鉄道

歴史、人材、etc.

山梨県といえば甲州武田・名将武田信玄が思い浮かぶ。中心都市である甲府は、永正16(1519)年、武田信玄の父武田信虎が躑躅が崎(ツツジガサキ)の地に館を移し、城下町の建設に着手したことに始まり、「甲斐の府中」を略して「甲府」と呼ばれるようになった。2019年に500周年を迎えた。山梨県は、中世、近世を通し歴史豊かな地であり、近現代においても阪急・小林一三、東武・根津嘉一郎をはじめとして優れた実業家、人材を輩出した地でもある。

信玄公祭りや吉田の火祭などのイベントが有名。鮑の煮貝、ほうとうなどの郷土名産。世界遺産に登録された富士山や山中湖、河口湖などの湖に恵まれる。日本三奇橋の一つと言われる猿橋などの観光名所がある。戦国大名武田信玄を祀る武田神社や由来のある甲府城稲荷櫓のほか、下部温泉、石和温泉や西山温泉などの温泉も豊富。

(参照)
県民経済計算(平成23年度 – 令和2年度)内閣府
マイナビ2025|山梨県で暮らす、働く魅力とは。 (mynavi.jp) 
山梨県の特色 – U・Iターン転職ならリージョナルキャリア山梨 (rs-yamanashi.net)
【公式】山梨県のおすすめ観光スポット/富士の国やまなし観光ネット 山梨県公式観光情報 (yamanashi-kankou.jp)
甲府市/リニア中央新幹線について (city.kofu.yamanashi.jp)
甲府市/(仮称)リニア山梨県駅前エリアのまちづくりについて (city.kofu.yamanashi.jp)
山梨県/リニア開通に向けて (pref.yamanashi.jp)

甲府市の印象

2023年11月に訪問した。観光を含めた都市としての魅力を調査するためだ。北から甲府盆地を挟んで南に富士山、南からは北に八ヶ岳、南アルプスを眺望できる。昇仙峡、武田神社、甲斐善光寺はトップ3の観光スポット。甲斐の郷土料理といえば「ほうとう」、武田信玄の「陣昼食」だったともいわれる。甲府鳥もつ煮、あわびの煮貝もうまい。あわびの煮貝は、江戸時代、駿河の海で獲れた鮑を加工し醤油の入った樽に入れ、馬の背中に乗せて保存食として運んだのが始まりという。

山梨の温泉は、四方を風光明媚な山々に囲まれ、露天風呂からは富士山や南アルプス、個性あふれる渓谷美など様々な景観を楽しむことができるほか、泉質も多様性に富んでおり、海抜100mから1,400mの地点まで大きな標高差にまたがって分布するなど、山梨の温泉環境の多様性は日本でも随一を誇るという。甲府市に湯村温泉、隣に石和温泉もある。宿の温泉とは別に、ほったらかし温泉で富士山、みはらし温泉から八ヶ岳、南アルプスを眺めての温泉露天風呂を楽しめる。

甲府市には、地場産業として宝石加工があるが産業規模としては小さい。ファナック本社は忍野村にあるが、甲府市からは国道137号線、又は中央高速道路で1時間程。ファナックが忍野村に本社を置いているのは、「富士山の麓というロケーションは、社員が研究開発や製造に打ち込むには格好の環境で、こういう場所でないと10年後の商品は生まれない」と考えているためということた。

確かに歴史的に優れた人材を輩出した背景には、山梨県の山に囲まれた(それは時に知恵を要するわけだが)、清浄で美しく、優れた自然環境が関係しているかもしれない。

甲府5-5 商業 公示価格 294,000(円/㎡) 前年比+0.7%

調査基準日 : 令和6年1月1日
所在及び地番:  山梨県甲府市丸の内1丁目93番
住居表示:  丸の内1-7-1
用途区分:  商業地
交通施設、距離: 甲府、170m
価格(円/㎡) : 294,000(円/㎡)
対前年変動率(%):  0.7(%)
地積(㎡) : 124(㎡)
形状(間口:奥行):  (1.0:1.5)
利用区分、構造 建物などの敷地: S(鉄骨造) 3F 利用現況 店舗兼事務所
給排水等状況:  ガス ・ 水道 ・ 下水
周辺の土地利用現況:  中低層の店舗ビルが建ち並ぶ中心的商業地域
前面道路の状況:  西 36.0m 県道
その他の接面道路:
都市計画区域区分:  市街化区域
用途区分、高度地区、防火・準防火: 商業地域、防火地域
建蔽率(%)、容積率(%): 80(%) 600(%)

評価書を読む

下記の評価書A,Bとも、鑑定評価額は294,000円/㎡。A、Bとも比準価格が、収益価格を17~22%程度上回っている。但し、その差は比較的軽微であり、概ね、収益価格を反映した取引が行われているといってよいだろう。なお、この標準地は、甲府駅、徒歩3分の好立地にあり、駅周辺の中心的商業地にある徒歩11~他の標準地(商業)と比べても3~4倍強の公示価格となっており、地域でも特別のプレミアム立地にあると考えた方がよさそうだ。

同じく駅周辺の中心的商業地域にあるとされる、甲府駅から徒歩11分の、甲府5-1(88,400/㎡)に対して3.3倍、甲府5-4(62,500/㎡)に対して4.7倍と突出して高くなっている。

不動産情報ライブラリ 甲府商業 地図表示 (mlit.go.jp)

  • 評価書A:  294,000 円/㎡ 対前年変動率+0.7 %

地域的特性: 中低層店舗ビル等が連たんするJR甲府駅前の目抜き通りの商業地

地域要因の将来予測: JR甲府駅に近接する飲食店等が建ち並ぶ商業地である。新型コロナウイルス感染症の5類移行後、客足は回復傾向で週末を中心に賑わいを取り戻している。今後の景気の動向が注視される。

最有効使用の判定: 低層店舗地 (KN注: 現況、鉄骨造3階建て店舗事務所なので、現況最有効使用)

取引事例鑑定評価の手法の適用:
比較法 比準価格: 300,000 円/㎡
収益還元法 収益価格: 255,000 円/㎡

市場の特性: 同一需給圏は甲府市中心部の商業地域である。中心となる市場参加者は、山梨県内外の投資目的の法人、個人等で、昨今の景気、取引情勢からは県外業者がやや多い。中小規模の賃貸ビル等が連たんする駅前商業地域である。新型コロナウイルス感染症の5類移行後は客足も戻ってきており、周辺で取引も見られ需要も回復傾向にある。需要の中心価格帯は画地条件により様々である。

試算価格の調整・検証及び鑑定評価額の決定の理由:  近隣地域は賃貸用商業ビルが建ち並ぶ商業地域で、需要者は投資目的での収益性、類似不動産取引等の分析、検討を行う。当地域では飲食店による賃貸需要が強く、収益性に着目した収益価格の信頼性は高い。一方、事例数は少ないが、代替競争関係にある取引事例により求めた比準価格は市場の実態を反映しており説得力が高い。以上により、比準価格と収益価格を関連付け、鑑定評価額を上記の通り決定した。

 [一般的要因][地域要因][個別的要因]
新型コロナウイルス感染症の5類移行後、経済は回復傾向にあるが、急激な物価高による景気の腰折れが懸念される。
新型コロナウイルス症5類移行後、飲食店舗等を中心に賑わいは相当戻ってきており、回復傾向が続いている。
個別的要因に変動はない。

  • 評価書B:  294,000 円/㎡ 対前年変動率: +0.7 %

地域要因の将来予測: 駅前の飲食店舗が多い商業地域で客足が回復し、今後地価は強含みで推移すると予測する。

最有効使用の判定: 低層店舗地

鑑定評価の手法の適用:
取引事例比較法: 比準価格 305,000 円/㎡
収益還元法:  収益価格 250,000 円/㎡

市場の特性: 同一需給圏は甲府市中心部の商業地域一円である。典型的な市場参加者は、投資目的の不動産賃貸業者及び個人投資家等である。中小規模の賃貸ビルが連たんする繁華性が高い駅前商業地域である。新型コロナウイルスの影響がなくなり、客足が戻り商況が回復した。需要の中心となる価格帯は、土地100㎡で3,000万円程度であるが、甲府駅至近における売買は非常に少ない。

試算価格の調整・検証及び鑑定評価額の決定の理由:
市場参加者は、投資用不動産としての収益性を検討するほか、代替競争関係にある類似不動産の取引価格にも着目して購入の意思決定を行う。本件では、甲府駅至近に位置する場所的希少性が反映され、比準価格が収益価格を上回った。購入者は収益性を考慮したうえで取引を行っており、比準価格には収益性が考慮されている。したがって、本件においては、市場の実態を反映した比準価格を重視し、収益価格を比較考量のうえ、鑑定評価額を上記のとおり決定した。

[一般的要因][地域要因][個別的要因] 新型コロナウイルス5類移行後は、経済環境は持ち直し、客足もコロナ前と同等に戻った。
1階路面店舗の需要は底堅く、空き店舗はなく、テナントが退去しても直ぐに埋まる。
個別的要因に変動はない。

(補足)

収益価格算定にあたっての最有効使用の想定建物 (評価書A)
用  途 店舗
建築面積 108.00(㎡)
構造・階層 S3 (鉄骨造3階建)
延床面積 324.00(㎡)
想定建物の概要 1~3階とも、フロア貸しを想定
有効率  81.9 % (ロビー、エレベーター等の共用部分がある)
建物等の初期投資額 75,000,000 円
= (算定根拠) 227,000 円/㎡ ×  324.00 ㎡ × (100% + 設計監理料率2.00 %)

建築費
平米単価 227,000円 x 102% = 231,540円/㎡
坪単価 750,414円 x 102% = 765,423円/坪
KN注: 坪76.5万円は業者価格だろう

2023/04/08

By Kota Nakako

以上

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